拝見~夜咄の茶事 ~ 茶道の知識
拝見~夜咄の茶事 ~ 茶道の知識
夜咄(よばなし)の茶事とは、炉の季節、夜の長い12月頃から2月頃までの、夕暮れ時から夜にかけて行われる茶事のことで、夜会ともいいます。
夜咄には、手燭や行燈など、昔ながらの灯火具が用いられ、上級者向きの非常に趣のある茶事です。
点前や拝見にも手燭が伴い、他の茶事にはない風情を醸し出します。
拝見・夜咄の茶事~待合 ~ 茶道の知識
夜咄の茶事は午後5時から6時頃の案内で、露地では灯篭や露地行灯に火が灯されています。
待合には大きな火鉢と座敷行燈が用意されています。白湯が基本の汲み出しも、冬の寒い身体を温める意味で甘酒や卵酒などが出されことがあります。
待合では、掛物を拝見してから席につき、汲み出しをいただいて一心地ついたころに、案内されます。その際にもう一度、待合掛を拝見して、露地に出ると、手燭が用意されています。
拝見・夜咄の茶事~初座
初入りの席中は、点前座付近に短檠(たんけい・背の低い灯り)で照らされています。正客から先に入り、床前に進み、手燭の灯りのもと、掛物を拝見します。
掛物が細字などで十分見えない場合は、手燭を掛物に寄せて拝見することもあります。このときは、蝋燭の炎が掛物に近づかないように注意して燭台を持ち、柄を掛物に向けるようにします。
末客の床の拝見が終わったら、手燭を茶道口に返し、点前座を拝見します。点前座に進み、灯りの中で、濡れ姿、炉縁、炉中などを拝見します。
席につき、主客の挨拶が一巡したら、正客は待合の掛物や煙草盆、汲み出しなどについて尋ねます。 初座の挨拶のあと、とりあえず寒さをしのぐため前茶という薄茶を点てますが、道具の拝見はせず初炭手前に移ります。
拝見・夜咄の茶事~初炭手前 ~ 茶道の知識
前茶の後、亭主は炭斗を持ち出し、灰器を右手、手燭を左手に持って席につきます。亭主が初掃きを始めると、正客から順次、次礼をして炉辺に寄り、炉中を拝見します。点炭がつがれると、末客から次礼して席に戻ります。
次に、亭主が香を焚き、蓋を閉めると、正客が香合の拝見を所望します。香合が、手燭が添えられて定座に出されますので、正客が香合と手燭を引いて、客座まで戻ります。末客まで拝見が済んだら、末客が手燭を持って出て、香合のみ正客に取り次ぎ、手燭は茶道口に戻します。
初炭手前の後は、懐石になります。懐石の席中には客と客との間に膳燭という蝋燭台が出されますので、やや明るい中で暖かい懐石を楽しむことができます。
懐石の拝見では亭主の心入れの数々の器に料理が盛られた姿や、料理のない器本来の姿を楽しみます。
主菓子の後、正客から順に次礼し、退席時に再度、床を拝見します。この時は手燭はなく、初入りの時とは違った表情の風情を楽しみ、後座の濃茶に移ります。
拝見・夜咄の茶事~後座
後座の用意ができると、喚鐘が打たれます。手燭を持った正客に先導され、後入りします。夜咄の茶事の後座は、石菖を入れた鉢を置くか、花を活ける場合は白い花以外は用いないということがならわしとなっているそうです。
正客から順に床荘りを拝見し、点前座に移ります。点前座の中央に座り、水指と仕覆を入れた茶入を拝見し、次に体の向きを変えて、炉の前に扇子を置いて、釜、炉縁、炉中を拝見します。
夜咄の茶事の後座では、濃茶に続けて薄茶を点てる続き薄茶となります。濃茶を練った茶碗と古帛紗が定座に出され、下座に手燭が置かれますので、正客がこれらを取りに出て、客座に戻って一碗をいただきます。末客まで濃茶をいただき終わると、正客が末客に茶碗の拝見をお願いします。
次ぎに、薄茶となり、一服目は、正客でなく次客がいただき、次客のひと口で茶入と仕覆の拝見を所望します。次客が茶碗を拝見している間に、正客は拝見物を取りに出て、席に戻り、二服目のお茶を頂戴します。三服目を末客が終えたら、お仕舞いとなり、正客が茶杓と薄茶器の拝見をお願いします。
ここで、正客のもとに、茶入、仕覆、茶杓、薄茶器四器が揃いますので、手燭のもと、亭主が取り合わせた道具相互の調和をしっかりと拝見しましょう。
拝見・夜咄の茶事~退席 ~ 茶道の知識
拝見物を水屋に引いた後、亭主は水屋の箱炭斗を持ち出し、釜をあげて炉中を直し、炭をつぎ、香を焚
き、釜をかけます。これを止め炭といい「茶事は終りに近づいていますが、まだゆっくりとしてください」という意味を持っており、亭主も席に入って、しばらく語らいの時を過ごします。
釜が煮え付き始めたら、客は辞去の意を表すようにします。もう一度、床と点前座を拝見し、退席します。
既に夜も更け、えも言えぬ風情ある趣の露地で、客は無言で亭主に別れを告げます。
※茶道の作法は、流儀によって異なりますが、ここでは裏千家の作法をもとに教本などに沿って紹介しています。