茶碗の拝見と見所 ~ 茶道の知識
茶碗の拝見と見所 ~ 茶道の知識
茶碗は、濃茶・薄茶を味わうために、客が実際に手に取り、口をつける茶道具で、茶碗を用いる人、お茶をいただく人の感性が、茶碗を拝見する際の最大のポイントとなるといわれています。
茶の湯で使われる茶碗の系統は大きく分けて、唐物(中国産)、高麗物(朝鮮半島)、和物(日本産)の三つの系統があります。その他、安南など南方産(東南アジア産)やオランダなどのヨーロッパ産の茶碗があり、現代では様々な産地の茶碗が用いられています。
抹茶の飲茶法が平安時代末に宋(中国)が伝来し、それまでの中国産の青磁や白磁の茶碗に加えて、天目茶碗が用いられるようになり、この時代には唐物がもてはやされるようになりました。
高麗茶碗に関しては、十五世紀末から十六世紀初期には日本に伝来したと考えられており、十五世紀あたりの茶会記に登場する高麗茶碗の名称には、狂言袴、白高麗、井戸、三島、割高台の五つがみられます。 和物の茶碗は、京都の長次郎が創案した楽茶碗、桃山時代に美濃で焼かれた瀬戸黒や志野、織部の茶碗などがあり、江戸時代に入ると、萩、唐津、高取、京焼の仁清などが登場しました。
茶碗の拝見のポイント ~ 茶道の知識
茶碗鑑賞のポイントの第一は姿、すなわち形です。茶碗を拝見するときは、まず全体の形や景色を鑑賞し、茶碗に入ったお抹茶の緑の景色まで楽しみましょう。
このとき、お茶に隠れている見込がどのようになっているかも想像し、口造りの感触を味わいながら喫します。お茶をいただき終えたら、見込を鑑賞します。
茶碗の姿を拝見するにあたっては、胴の形そのものも鑑賞のポイントとなります。胴の形は、やきものの種類によってほぼ定まった形があり、その曲線はさまざまですが、その姿の違いも鑑賞の楽しみとなります。
茶碗の拝見では、全体の姿はもちろんのこと、肌合いなどの土の様子や、色、窯変など釉薬の特徴、絵付け、高台の形や削り方などもポイントとなります。
事前に書物などで知識を頭にいれておき、自分自身の経験とあわせた上で、自分の「好み」の物差し(判断基準)を確立しておくことも、茶碗の拝見にあたっては、肝要であるといわれています。
例えば、唐津茶碗の特徴をあらわす表現として「ざっくりとした土味」といった言葉が使われることがありますが、どういった土味に対して「ざっくりと」という表現を用いるかは、それまでどれだけの作品を目にしてきたかどうかの経験値によって異なります。日ごろからの作品を多く目にして、経験を積み、自分なりの判断基準を磨いておくことが大切です。
茶碗の各部の見所 ~ 茶道の知識
【茶碗正面】
口造り・口縁・口辺
口部の作行を称する語です。飲み口をつける部分であり、口縁の厚みや端反り(縁の開き具合)の具合で、茶碗全体の風情や、お茶の味まで変わるなど、微妙な変化が茶碗全体の印象を左右します。
胴
茶碗の外側の口造りから腰までの部分を胴といいます。筒茶碗、平茶碗など茶碗の形を決める部分で、ろくろ目、へら削り、釉薬の景色や絵付けなどが見所となります。
腰
胴の下部から高台脇までの張り出し部のことで、茶碗の持ちやすさや、手にしっくりと馴染むかどうかが腰のつくりにより影響します。
【茶碗内側】
見込
茶碗内側の中央部分を見込といい、お茶を飲んだ後に、わずかに残ったお茶が茶溜(ちゃだまり)に残って、これも景色となります。また、目跡(重ね焼のときの付着を防ぐ砂粒の跡)や、茶巾刷り(茶巾で口縁を拭く時に、茶巾が当たる部分)、茶筅刷り(茶筅で抹茶を点てる時に、茶筅の当たる部分)などの曲線や深さなども見所です。
【茶碗裏側】
高台(こうだい)
茶碗の底に付けられた台座部分で、「器好きは裏を見る」といわれるほど、 茶碗の大きな見所のひとつです。高台の削り味により、「大胆な」「勢いのある」「繊細な」といった表情がでます。
高台のつくりには、一般的な「輪高台」、輪高台の一箇所を削り取った「切り高台」、輪型にせず、縦横十字に削り取ったりする「割り高台」、高台外側を、竹の節のような突起のある表情に削る「竹の節高台」など、様々な特徴ある高台があります。
高台の内側を高台内といいますが、高台の中央部を、兜の頭頂部のような突起を残して削る「兜巾(ときん)高台」、ろくろの回転を利用して削りカンナで渦巻き状に削る「渦巻き状」、土の種類・固さ・カンナの角度により生じる「縮緬皺」など、高台内にも、いろいろな表情があります。
高台脇
腰の下部から高台ぎりぎりの辺りのことを高台脇といい、釉薬と生地の境目になることが多く、釉薬がたまってできる 「釉だまり」 や、釉薬が縮れてできる 「梅花皮」などが見所になります。また、へら削りも見所となっています。
落款・刻印
作者が自分の印を押したり、サインを彫ったりします。楽茶碗の楽家のように代々継承されている作家は、代ごとに印の特徴があります。
※茶道の作法は、流儀によって異なりますが、ここでは裏千家の作法をもとに教本などに沿って紹介しています。