仕覆の拝見と見所 ~ 茶道の知識
仕覆の拝見と見所 ~ 茶道の知識
仕覆(しふく・仕服)とは、茶入や薄茶器、茶碗などの茶道具を入れる袋です。茶道具を守る意味もある仕覆には、茶人が道具を大切に思う気持ちが表現されています。
茶入などの仕覆に用いられている裂地は、中国より渡来した貴重な織物や染物でした。特に名物茶入と関連して評価された裂地は、「名物裂」と総称されています。
渡来した裂地は、鎌倉時代から江戸時代にかけて、中国の他、ポルトガルやスペイン、オランダ、インドなどとの貿易によってもたらされ、古代裂も多く使用されていています。
茶道で用いられる裂地の代表的なものとしては、金襴、銀蘭、緞子、紹巴、間道、錦、印金、毛織、更紗などがあります。中には、「珠光緞子」「利休間道」「本願寺金襴」などといったように呼称が付いたものも多くあり、この呼称が伝来、所持者や、吉祥文・植物文といった文様との関わりを表しています。
数々ある名物裂ですが、当初は分類がきちんとなされていませんでした。名物裂の分類の記録として、最初のものとされているのが、江戸時代の名物茶器を記した最高の茶書とされる「古今名物類聚」(松平不味公編纂)中の「名物切之部」といわれています。小堀遠州の時代になると、記録の数も増えてくるようになります。
仕覆の拝見のポイント ~ 茶道の知識
茶席の裂地を拝見する時には、裂地の種類や時代、名称、そして用いられている茶道具との関わりなどとあわせて鑑賞するとよいでしょう。
茶席での仕覆は、茶入にあわせて選ばれた名物裂や好み裂が用いられる場合が多く、拝見の際は、胴や底の裂地、仕立ての状態、仕覆の内側まですべて目を通します。
仕覆の主体である胴の裏地には塩瀬や甲斐絹など、表の裂地にあったものが付いていますので、こちらも拝見のポイントとなっています。
また、胴と同じ裂地が使われる底も、鑑賞しますが、畳に擦れない部分は、古い仕覆でも比較的良い状態で保存されている場合もあり、裂質の見所となります。
仕覆の「緒」も茶入や裂地にあわせて、紫や黄色、茶、白などが使われますが、取り合された緒の色も、亭主の感覚が出る部分ですので、自分ならどうするか考えながら鑑賞するのも楽しいものです。
仕覆の拝見の流れ
1.仕覆の拝見の流れ 畳の縁外に仕覆を置き、軽く手を付いて、仕覆全体の風情を拝見します。
2.仕覆の緒を両手に持って、デリケートな裂地に直接触れないように気を付けながら、裂地の時代・地色、文様、織り方などの仕立て等を詳細に見ていきます。
3.最後に全体をもう一度拝見してから、縁内に送ります。
※茶道の作法は、流儀によって異なりますが、ここでは裏千家の作法をもとに教本などに沿って紹介しています。