薄茶器の拝見と見所 ~ 茶道の知識
薄茶器の拝見と見所 ~ 茶道の知識
濃茶用には茶入を、薄茶用には主に塗り物の薄茶器が使われます。茶事では、濃茶の後の、口直し的なもてなしとして、薄茶があります。
薄茶器には、塗物・木地・蒔絵・陶磁器など様々な素材がありますが、一般的には茶入(濃茶器)が陶器であるのに対し、薄茶器は素材の異なる塗物をあわせる場合が多いようです。
薄茶器の代表が棗ですが、大きさ・形により、大棗・中棗・小棗・平棗・尻張棗・長棗・鷲棗などの種類があります。
薄茶器は通常、茶杓とともに拝見し、亭主の選んだ薄茶器と茶杓の調和に心を配り、薄茶器の中に抹茶が入っていることも念頭において、拝見します。
塗物の薄茶器の拝見の場合、漆がすみずみまで丁寧に塗られているかどうかが見所の大きなポイントとなっています。時代ものの塗物の薄茶器は、漆の色の変化を、下地の色とあわせて、あじわいや、まろやかさを鑑賞します。
蒔絵のある薄茶器の拝見では、蒔絵師の技術をよく鑑賞します。良い作品の場合は、蓋裏の「小隅」と呼ばれる隅の部分まで細部にわたって丁寧な仕事がなされています。
また、立ち上がり(蓋と身のかみ合わせ部分)は、身の内側から立ち上がるため、作者や職人の技量が表れる部分でもあります。
蓋の肩(甲の両端の出っ張った部分)には、微妙な張り具合にも作者のこだわりが表現されていますので、見所のひとつとなっています。
また、薄茶器は、蓋の甲(表)から裏まで模様が続いているものもありますので、蓋裏もしっかり鑑賞しましょう。
歴代家物や宗匠・茶人好みの薄茶器の蓋裏には、花押が記されているものもあります。
また、薄茶器の鑑賞の場合、見た目と、実際に手にとった時の重さのギャップ(木地と塗りの厚さのバランスによる)を楽しむということもあります。さらに、蓋の閉まり具合である合口の感触もあわせて鑑賞します。職人によってはぴったりと合せる塗り方をする場合もあれば、ふわっと合わせる塗り方がされる場合もあります。
薄茶器の拝見の流れ ~ 茶道の知識
1.畳の縁外に薄茶器を置き、軽く手をついて全体の形や大きさ、ようすを鑑賞します。
2.左手で蓋をとり、低い位置で蓋の甲と裏を拝見します。
3.薄茶器の身を手にとって、感触をあじわい、中の抹茶がこぼれないように気を付けながら、塗りや立ち上がりのようすなどを細かくみます。
4.最後に全体の姿を鑑賞して、縁内に送ります。
※茶道の作法は、流儀によって異なりますが、ここでは裏千家の作法をもとに教本などに沿って紹介しています。