茶入の拝見と見所 ~ 茶道の知識
茶入の拝見と見所 ~ 茶道の知識
茶会・茶事でメインとなるのが濃茶です。濃茶を入れる容器である茶入は、拝見物の中でも主格の道具とされています。
茶入は、中国からお茶が伝来した時に、中国からもたらされた小壷を、茶の入れ物として見立てて利用されたことに始まります。
当時は唐物(宋・元時代の中国において生産された物)が珍重されていましたが、室町時代以降になると、日本でも瀬戸を中心に小壷が焼かれ.各地の窯で茶入がつくられるようになりました。
茶入は通常、焼き物で、象牙の蓋が付き、仕覆という袋に入れて用いられます。 そして、茶入は特別の道具として盆や掛軸にそえられ、珍重される「名物茶入」には、飾用の棚が添うものもあります。
茶入は伝来や所持者が重んじられ、茶道具の中でも、特にこだわりのあるものとされています。
茶入の拝見と見所 ~ 茶道の知識
茶入の生命は、「姿」と「釉」にあるといわれます。茶入の拝見する際のポイントとして、「ナリ(形)」「コロ(大きさ)」「ようす(釉薬、土の状態、触感など)」という表現が用いられます。
茶入を拝見する時は、このナリ、コロ、ようすの3点を確かめながら行うとよいとされています。
茶入の姿には、口・肩・胴・腰・裾などの見所とするポイントがあります。
口造り…口造りの多くは捻り返しという、外側へ少し沿った形をしており、微妙な加減が鑑賞のポイントです。中には、捻り返しのないものもあります。
咽喉…口造りと肩の間の咽喉は、高さや太さのバランスが見所です。丸壷や鶴首などは甑がかなり目立ちます。
肩…甑の付け根から横に張り出した部分が肩と呼ばれる部分で、肩衝茶入では「きりっとした」、撫で肩は「優しい印象」という表現で形容されます。
胴…肩から裾までの茶入の主体をなす部分である胴は、見所の中心となります。
釉薬がながれて景色となった状態を「なだれ」といい、鑑賞のポイントとなります。なだれの先端を露といい、ここも鑑賞するポイントです。他に地釉・上釉があります。
釉際…釉薬と胎土の境目となっている胴と裾の境目の所で、それを景色として鑑賞します。
土見…釉薬のかかっていない裾の部分で、土質をじかにあじわうポイントとしてしっかり拝見するポイントです。 釉薬がかかっていないので、汚れやすく、なるべく手をふれないように鑑賞しましょう。
畳付…畳に付く底の部分で、ろくろから切り離した後の糸切りや板おこしが見所です。
蓋・牙蓋…茶入はその姿だけでなく、蓋や蓋裏も観賞ポイントです。牙蓋を手にもって拝見し、蓋の表は全体の形、象牙の色や景色、摘みの形が見所です。裏は、金箔の具合を拝見します。
象牙蓋に、窠、虫食いと称する疵(キズ)のあるものを「窠蓋」といい、茶人に好まれる見所となっています。
茶入の拝見の流れ
1.畳の縁外に茶入を置き、軽く手をついて、全体の姿を拝見します。
2.牙蓋を両手で取り、蓋表と裏の金箔の状態を鑑賞します。
3.身を手に持って、手に取った感触をあじわい、釉薬のかかっていない土見に手が触れないように気を付け、詳細の拝見を進めます。
4.最後に蓋をして、全体の姿をみて、縁内に送ります。
茶入を拝見する際は、銘や取り合わせた亭主の意図はどこにあるかを想像し、「ナリ、コロ、ようす」とあわせて鑑賞を進めてみるとよいでしょう。
※茶道の作法は、流儀によって異なりますが、ここでは裏千家の作法をもとに教本などに沿って紹介しています。