棚物の種類~小棚 その4 ~ 茶道の知識
棚物の種類~小棚 その4 ~ 茶道の知識
小棚の種類は、歴代家元の好み物などが非常に多いため、その3に続き何回かに分けて説明しています。
猿臂棚(えんびだな)
圓能斎好の桐木地で四本柱の二重棚です。申歳生まれの 圓能斎には申にちなんだ好み道具が多くみられますが、この猿臂棚もそのひとつで、玩具の「はじき猿」から考案したものとされています。
客付手前の柱のみが白竹になっています。客付の嵌め板は大きく弓なりに刳られて弾きの形に透かされ、くくり猿の意匠になっています。猿臂棚は、炉・風炉ともに用いられます。
豊祥棚(ほうしょうだな)
淡々斎好。桑木地楕円形で三本柱の一重棚です。団扇形の透しのある腰板を曲げて嵌め、地板は蛤端(はまぐりば)に面が取られています。
川本光春の作で、昭和十五年、皇紀二千六百年を寿いで好まれたといわれています。炉・風炉ともに用いられます。
花月棚(かげつだな)
圓能斎好。杉木地で白竹三本柱の二重棚で、方形の天板、地板で、中棚は三角形になっています。
全体が七事式の花月に用いる折据を象っています。柱は勝手付に二本、客付に一本を立て、勝手付手前の柱に竹釘を打ち、地板の四隅には雲脚がついています。炉・風炉ともに用いられます。
徒然棚(つれづれだな)
淡々斎好で、業平棚ともいいます。作者は岩木裕軒で、桐溜掻合わせ塗で菱形の棚です。桑木地のものもあります。上段が袋棚になっており、中央が二枚引きの襖で、銀金具の座に鹿皮の垂引手がついています。襖には、三本の磯馴松が描かれています。
客付の腰板には一段、勝手付の板には二段に業平菱を意匠にした透かしが施されています。炉のみに使われます。
行雲棚(こううんだな)
天板と地板は松材拭漆、桑材の四本柱の二重棚で、鵬雲斎が好んだ棚です。「行雲流水」の語から命名されました。
中棚は楓、中棚の右脇は梅、左脇は桜、四本柱は桑、勝手付と向こうの腰板は玉椿の材、腰板の上は白竹、客付の桟は黒柿と様々な材が用いられています。また、中棚右脇には行雲透かし、二面の腰板には流水の透かしが施されています。炉・風炉ともに用いられます。
寿扇棚(じゅせんだな)
鵬雲斎好。天板、地板が紅溜塗の三本柱の角棚です。柱は客付が末、勝手付手前が竹、向こうが梅の角となっています。 棚の向こうと勝手付に桟がはまり、扇形の腰板がはめられています。天板は客付手前が丸く切られた誰袖形になっています。風炉・炉ともに用いられます。
平生棚(へいじょうだな)
木地溜塗の三本柱の二重棚です。 坐忘斎が好まれた棚で、天板が円形、中板が三角形、地板が方形の小棚です。三本柱の断面はつぼつぼの形になっており、地板は木口を斜めに切って末広の形としています。炉・風炉ともに用いられます。
※茶道の作法は、流儀によって異なりますが、ここでは裏千家の作法をもとに教本などに沿って紹介しています。