岡本陽斎作 金彩桐文 小吸物椀5客揃
漆塗師・岡本陽斎による小吸物椀をご紹介させていただきます。「高尚」や「めでたさ」を意味する桐文様が金彩で施され、作品に華やかさを添えています。
作者について
1932年京都府生まれの岡本陽斎は、多くの工程を経て完成する輪島塗の中でも漆塗師としてその技術を高く評価されています。
生涯を通して京都に住まいを構え、作品づくりは山中塗や九谷焼でも知られる石川県山中町の工房で行うライフスタイルを貫きとおし、多くの作品を世に送り出した岡本陽斎は、漆器づくりの基本となる最高品質の漆にこだわり、伝統的な文様のモチーフを得意としました。
作品ひとつひとつに作者の高い美意識を肌身に感じることができる作風は人気が高く、いまも多くの愛好家を魅了しています。
輪島塗 ―日本を代表する漆器とその最大の特徴
金沢から北へ約120キロ。日本海に突き出た半島の先端に位置する輪島は、陸の孤島のような辺地にありながら漆器の一大産地として現在まで歩んできました。その発展には輪島ならではの大きな理由があります。
まずは、塗師屋(ぬしや)と呼ばれる漆器商たちが全国に顧客を持ち行商して回ったという独自の販売方法が定着したこと。
もう一つには輪島地の粉が発見され、丈夫な漆器の制作が可能になったことです。
「輪島地の粉」とは珪藻土から作る下地塗に混ぜる材料のことを指しますが、この“魔法の土”の発見こそが輪島塗が発展した最大の鍵と言われています。海中のプランクトンが積み重なって出来た地層から採取した珪藻土を水で捏ね、焼いて粉状にしたものを下地作業に用いることで他に類のないほどの頑丈さが可能になり、まさに一生ものの逸品を生み出すことに繋がりました。
堅くて丈夫な漆器づくり
堅牢な漆器であることを一番の特徴とする輪島塗には、多くの技法・工程を必要とします。
椀の縁など欠けやすい部分に布着せをして補強し、布との段差が完全に無くなるまで研いだのち、やっと「地の粉」を使った下地の仕事に入ります。
この「着せもの漆」の後、地の粉を米のりと生漆(きうるし)を混ぜたものに入れ、パテ状にしたものを塗っては研ぐ作業を何層も施していきます。地の粉には無数に小さな穴が空いているため、そこに染み込んだ漆が固まることで、本堅地(ほんかたじ)と呼ばれる、より丈夫な下地に仕上がるのだそうです。その後も、中塗りや漆を厚く塗りあげる花塗と呼ばれる工程を経て作品が完成します。
「家具膳」のような素朴な塗り立てが主流だった輪島塗も、享保年間に沈金、文化文政時代には蒔絵が伝わり、その頃より加飾も行われるようになったと伝わっています。
良い漆器は、正しい手入れで時が経つほどに強度を増し、その真価は実に100年後に現れるとまで言われています。精緻な技を集結させた漆器を慈しむ愛用者は多く、深みを重ねた表情のある器は、修理を繰り返し何十年と使い続けることができます。
時代は使い捨てからサステイナブルへ。まさにこれからの時代に適した漆芸文化のさらなる発展に注目が集まりそうです。
いわの美術によるお買取り
いわの美術では、他にも輪島塗の巨匠として知られる角偉三郎、川端近左、三谷吾一など多くの作家による作品を買い取らせていただいております。ご処分をお考えの作品をお持ちでしたら、ぜひ一度いわの美術にご相談ください。下記まで写真をお送りいただくと無料で専門スタッフによる査定にてお買取額を申し上げることが可能です。
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