新着情報

楽茶碗とは ~ 茶道の知識

2015/12/08

楽茶碗とは ~ 茶道の知識


茶の湯において、茶人に愛好される優れた茶陶を称する表現に「一楽二萩三唐津」や「一井戸二楽三唐津」というのがありますが、その中で一番にあげられているのが「楽茶碗」です。

楽茶碗は、轆轤などを使わず、手とヘラだけで成形する「手捏ね(てづくね)」と呼ばれる方法で成形した後、低火度釉を用いて750~1100℃以下で焼成する軟質施釉の楽焼の陶器です。


楽茶碗は、桃山時代の天正年間に、京都の楽家初代・長次郎が茶の湯の大成者千利休の意向に沿って製作したのが始まりです。

楽家を本窯物と呼び、本窯物以外の楽家傍流の「玉水焼」の茶碗、「大樋焼」の茶碗を、脇窯物と呼んで、これらも楽茶碗に含まれます。現在では、楽家以外の作品でも、同様の製法で作られた茶碗も楽焼・楽茶碗と呼ばれています。


楽焼は、当初、瓦職人だった長次郎が、聚楽第を建造する際に土中から掘り出された土を使って造った「赤楽」と「黒楽」の二種でしたが、その後、白釉、飴釉、黄釉などの色釉も用いるようになりました。


楽茶碗の成形は、多孔質の素地土を用い、手とヘラ削りのみの「手捏ね」でつくられ、家屋内に作られた小規模な釜で焼成する「内窯焼成」という制作技法が特徴です。

手づくね成形とは、轆轤を使わず、土を手でこねて形を作り、ヘラで削って姿を整える作り方で、ヘラで削った跡などが楽茶碗の見所のひとつとなります。

楽茶碗の釉は、低い温度で熔融するよう調合され、焼成は、楽焼独特の急熱急冷法で、ひとつずつ焼き上げます。火を止めて、窯の中で自然冷却する置き冷まし法がとられることもあります。


千利休が茶道のために考案し、楽家によって作られた楽茶碗は、お手前に関係して様々な工夫がされています。


楽茶碗の色は、黒、赤などが主ですが、これは抹茶の緑の色が映えるように考慮された色となっています。

楽茶碗の口造りは、五つの山のように微妙な高低差がある「五鋒」と呼ばれる造りとなっていますが、これはデザインが単調にならないようにというだけでなく、お点前の際、茶碗の縁に茶杓や茶筅をのせかけた時に落ちるのを防ぐという意味も兼ねてつくられています。


また、楽茶碗の中には、茶筅摺りと呼ばれる段差がつけられていますが、これはお茶を点てる時に茶筅が動かしやすいように、そういったつくりになっています。楽茶碗は、千利休の茶の心の表出ともいえる茶碗だけあって、様々な工夫がされています。


映画出演した楽茶碗 ~ 茶道の知識

2013年発表された山本兼一作、第140回直木賞受賞の「利休にたずねよ」という映画がありますが、この映画の中で、千利休を演じた市川海老蔵が点てるお茶に使った黒楽茶碗が注目されました。映画に使われた黒楽茶碗・万代屋黒は、約430年前に初代楽家・長次郎作の千利休が使ったとい本物であったということで、当時大変話題となりました。


現在の楽家当主の十五代・楽吉左衛門が所有するこの楽茶碗は、門外不出の歴史的名器でしたが、映画スタッフや主演の市川海老蔵の強い希望を受け、撮影が叶い、表千家・裏千家・武者小路千家の三千家の協力の元で行われました。 この映画には、他にも千利休が活躍した当時から現存する赤楽茶碗、井戸茶碗、熊川茶碗も登場しているそうですので、お茶を嗜まれている方なら是非観ておきたい映画のひとつではないでしょうか。



茶道具買取・売却の極意 TOPページはこちら!