茶道での茶碗について ~ 茶道の知識
茶道での茶碗について ~ 茶道の知識
茶道での重要な道具のひとつである、お抹茶を飲むための茶碗。抹茶を入れて飲む茶碗は、その数や種類も豊富で、茶道具の中でも身近な存在であるともいえます。茶碗は日常生活の中で広く活用され、生活に馴染んだ道具です。
茶道具としての茶碗は、唐物・和物に分けられ、以下のような系統があります。
唐物茶碗…中国(天目、青磁、その他)、高麗(朝鮮)、安南(ベトナム)、宋胡録(タイ)
和物茶碗…楽焼、京焼、国焼
茶道での茶碗は、それ単体だけで美術品としての価値があるものも多くみられますが、基本は茶を客においしく召し上がっていただくための道具です。
茶道の作法の中に、茶碗を鑑賞・拝見することも含まれていますが、「侘び」を主とする茶道は、亭主が客人をもてなす気持ちを重視するものですので、高価な茶碗の品評会とならないように注意しましょう。
茶碗の名称 ~ 作動の知識
茶碗の各部には名称がつけられています。 口をつけて飲む部分を「口作り(口造り)」と呼び、薄いものや厚いものがあります。
茶碗の周りの部分が、人間でいえば胴体にあたりますので、「胴」と呼ばれ、釉薬が模様のようになったり、絵付けが施されたりする部分です。その下が「腰」で、茶碗の底の高くなっている部分を「高台」、その脇を「高台脇」と呼び、茶碗を扱う際に手をかける部分です。
茶碗の持ち方 ~ 茶道の知識
茶碗を取り上げる時には、右の人指し指から小指まで軽くそろえて、茶碗の高台脇にかけ、親指は口作りにかけて四本の指で下から持ち上げるようにして取り上げます。
この時は、高台脇に手をかけて、四指で持ち上げるようにして持ち、茶碗と指との間に空間ができるようにして、茶碗の形を活かすようにして持ちましょう。
茶碗を掌で握り込むようにしてしまいますと、茶碗の形が見えにくくなってしまうからです。
次に、茶碗を取り上げ、左手の掌にのせます。 左掌にのせたら、右手は親指を前に、四本の指は添えて茶碗を胴に添わせます。親指を前にすることによって、茶碗が安定します。
抹茶を飲むには ~ 茶道の知識
茶道では、お茶碗を回すイメージがあるかと思いますが、これはなぜするのかご存知でしょうか。
茶碗には正面があり、正面とは人の顔に当たる部分で、作者にとっては特に見て欲しいと思って作っている箇所になります。
茶碗の正面は、胴の中でも特別な箇所であり、それに敬意を払って、茶碗を回して違う箇所でお茶を飲むという考え方です。
流派によって異なる場合もありますが、基本的には、どちらに回して飲んでいただいても良く、いただいた後には、元のように正面を前にして茶碗を戻しましょう。
お抹茶をいただく際は、何口で飲むとよいでしょうか。 これも美味しくいただければよいので、特に決まりはありません。
一気に飲むよりも、一口いただいたら、少し味わう余裕があるとよいですね。また、時間がたてば、抹茶は茶碗の中で沈殿してしまうので、出されたら、あまり時間をおかずにいただくのが、客としての心得です。
抹茶をいただくのに、一口飲んでは茶碗を置き、また一口いただくというのは、茶席ではあまり姿の良いものとはいえません。また、茶碗を手にのせて、一口いただくたびに茶碗をゆっくり回す方もいらっしゃるようですが、これもあまり姿の良いものとはいえません。
最後には、すっと音をさせて、茶を吸うのですが、たとえ抹茶のダマや茶溜まりがあっても、それを残さないようにすっと吸いきってしまうのが、亭主への礼儀です。
茶碗の拝見 ~ 茶道の知識
抹茶を飲み終わると、茶碗を拝見します。亭主が選んで使ってくださった茶碗ですので、その思い入れのある茶碗を大切に鑑賞するのが、客としての礼儀となります。
1. 飲み終わった茶碗を畳の上、縁外に置きます。
2. 膝前に指先をつき、茶碗の全体の姿を鑑賞します。
3. 手に取り上げて(あまり高く取り上げないようにして)拝見します。
釉薬、色、形、高台などを拝見して、縁外正面に置きます。
4.軽く指先をついて、もう一度全体の姿を見ます。
豪華さを排除し、質素な精神を重んじる「侘び茶」の精神が茶道です。
現在のような茶道を完成させたのが茶聖・千利休ですが、千利休が侘び茶を行う前は、高価な茶碗などの茶道具の鑑賞会という意味合いが強くありました。
そういった茶道具の鑑賞会的な茶道のあり方に、禅の考え方を取り入れ、道具よりも、人と人の交わりを大切にする、そして、茶そのものを美味しくいただくもてなしの場へと昇格させたのが千利休です。
千利休の活躍によって、和物の茶碗が広く用いられるようになりました。そして、お茶をするのに適した茶碗が開発されるなどし、高価な道具がメインであった茶道から脱却していき、日本の伝統文化としての茶道が出来あがっていったのです。