茶の湯の道具について ~ 茶道の知識
茶の湯の道具について
茶の湯とは?
本来、茶の湯とは、抹茶を呑み楽しむというシンプルな行為ですが、利休道歌(百首)のひとつに「茶の湯とは只湯をわかし茶をたてて呑むばかりなるもとを知るべし」とあり、そこには茶の湯は自分自身の生命のもとを看るためのもので、我欲に捕われない、あるがままの自分を見つめるという千利休の茶の精神が根底にあります。茶の湯とは、心を高める実践的な方法として時代とともに、発展してきました。
茶の湯は、客を招き、一碗の抹茶をすすめるというもので、抹茶を美味しく味わってもらうためのものです。そして、茶席の亭主の趣向や、道具の取り合わせの鑑賞も、茶の湯の目的のひとつとなっています。
茶の湯は主として狭い茶席で行われ、その中で用いられる茶道具の数も限定されるので、個々の茶道具に対する鑑賞の仕方も自然に綿密になっていきました。
茶の湯の道具について
茶の湯では、茶碗と茶筅があれば抹茶を呑むことはできます。しかし、一碗を楽しみ、客との一座建立の茶会となると、様々な茶道具が必要となります。 ここでは基本的な茶の湯の道具の名前や役割などについて紹介します。
掛物
掛物は軸物・幅・床とも呼ばれ、表装して床の間に用いられる掛物であることから、茶掛という言葉も生まれました。
掛物は、亭主の姿勢、茶会のテーマなどを表すもの、茶の湯の席で重要な役割を果たしています。 茶の湯の掛物としては、絵画や書、絵画と書両方が描かれた画賛があります。
絵画…唐絵、大和絵、水墨画など
書…墨跡、古筆切(歌切・懐紙)、一行書、色紙、短冊など
画賛は茶人が書いたものが好まれます。
掛物は一座建立の主題とされるほど重要な道具のひとつとされています。
花入
床の間に花を飾る花瓶のことを茶の湯では花入といいます。日本で花がいけられるようになったのは、仏事の飾りとして花をいけることにはじまるといわれ、花入は仏事の三具足・五具足の中の貴重な道具として古来、扱われてきました。
書院造の座敷ができるようになると、床や書院に花を飾るようになり、室町時代末の茶の湯の席では花がいけられ、季節感を味わい花をいけた花入の器の美しさを鑑賞するようになりました。
花入の種類には、唐銅・焼物・竹など、色々な種類があります。
釜
茶の湯の釜は、茶釜とも呼ばれ、お茶を点てるお湯を沸かすための不可欠なものです。夏は、炭を焚いた風炉(風炉釜)を畳の上に置き、その上に釜を乗せてお湯を沸かします。
冬は畳に埋め込まれた炉で釜にお湯を沸かします。
鉄でできた釜は、形や大きさなど様々で、芦屋釜、天命釜などがあります。
茶器
茶器は、茶の湯において用いられる器全般を指しますが、狭義には抹茶を入れて茶席に持ち出すための器です。濃茶用には茶入を、薄茶用には主に塗り物の薄茶器が使われます。
薄茶器の代表的なものには、棗があり、茶入には名物といわれるものがたくさんあります。
茶杓
茶杓は茶器から抹茶をすくい、茶碗に入れるための茶匙で、竹の物が多く使われています。初めは中国の象牙製のものが輸入され、茶をすくう部分が芋の葉の形をした芋葉茶杓でしたが、次第に茶器に入れやすく、道具の上に置くのに都合のよい形に変っていきました。
茶杓は、作り方もさほど難しいものではないため、昔から茶人自らが自作することも多かった茶道具です。
茶碗
茶を呑むための器が茶碗で、他の茶道具と同様、時代の好みを反映して様々なものが用いられてきました。茶の伝来とともに登場したのは、唐物の青磁、白磁、天目茶碗で、鎌倉・室町時代に用いられました。茶碗は、産地により、唐物茶碗、高麗茶碗、和物茶碗に大別され、その中でも細かく分類されています。
水指
茶席において、釜の湯の温度を整えるために水を差したり、茶碗などをすすぐ水を入れる器です。水指を素材で分けると、金属製、陶磁器製、木地物、ガラス製などがあります。
その他、建水、香合、柄杓、茶筅、蓋置、帛紗、炭斗、棚物、風炉先屏風など、様々な道具が必要ですが、それぞれが、茶の湯の席の全体を構成する総合芸術のひとつの要素として、大切な存在となっています。