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稽古の席掟 ~ 茶道の知識

2016/01/30
稽古の席掟

稽古の席掟は、茶席での決まりごとについて記した書物で、現在の茶道のお稽古やお茶席でのマナーと決まりごとの元となっている大原則です。
一言ずつが厳しく、心身を躾け、稽古の場を引き締める掟となっています。
裏千家の玄々斎宗室が江戸時代の安政3年(1856年)に規定した家元の稽古場での掟書きであり、大板に刻んで裏千家の水屋に掲げられています。
このような席掟に習い、稽古場に掟書きを掲げているお教室もあるかもしれません。
浅学ではありますが、今回は「稽古の席掟」本文をできるだけ丁寧に解釈していきます。

稽古の席掟
掟は実に20ありますので、文章で教えるよりは席掟の意識を所作で実行できるように指導する先生が多い事と思います。

礼儀尊重の事
礼儀を尊重すること

着座運付とも体の備えに呼吸の考え第一の事
席に着くときも運ぶ時もからだの備えと呼吸を第一に考える事
正座だけでなくお点前の動きには普段の生活習慣からの姿勢の良さや機敏さも求められてくるようです。

雑談のあるまじきこと
雑談してはならない。意識を集中させ、静寂を保ちます。

点茶の節腰提げ物禁事
茶を点てるときは腰に提げ物(着物の帯に提げる巾着など)をしてはならない
現代では「お稽古の時にはアクセサリーや時計を外しておくこと」が主流の掟になっています。
この掟書きが書かれた江戸時代では根付、巾着、物入れ、喫煙具であった模様です。
根付、巾着、物入れ、喫煙具はコレクターも多く、いわの美術でも査定依頼が多いお品物です。

袴並十徳着用あるに可(よ)きこと
十徳は男性が着用する絽の着物。袴並に十徳を着用ある→教師役ができる証拠
茶道では許状をもらって初めて十徳の着用が許されます。

濃茶始小習い等稽古の節客になる人羽織脱げ可こと
濃茶をはじめ小習いなど稽古の節、客になる人は羽織を脱ぐこと

菓子盆煙草盆並みに火鉢等のとり扱い念を入れる事
菓子盆や煙草盆と同じように火鉢などの取り扱いには念を入れる事
いわの美術はお客様からのお問い合わせに際しまして、丁寧な確認を心がけてまいります。

水屋拵え点茶炭点前とも丁寧に執斗跡片付けも元の錺(かざり)置くべきこと
水屋を拵え、点茶や炭点前ともに丁寧に執り、跡片付けの際も元の置き方にかざること

風炉の節は足袋無用のこと
風炉の節(暑い季節)は足袋は履かなくても良い
(現代においては夏も足袋あるいは白ソックスは必須です)

婦人は四季共足袋履くこと
婦人、女性は四季を通して足袋を履くこと

道の問事幾ヶ条にても遠慮なく右に申し出被る事
専門的な問いは幾ヶ条にても(何ヶ条でも)遠慮なく目下の者に申し出て頂くこと、目下のものの質問は自ら進んで受ける事

出席の方々稽古並みに問い事も互いに心を入れ見聞きする事
茶会に出席している方々は他の人がしている質問も稽古と同じようにしっかり目と耳を傾けること。

他流の規距(きく)尋ね被る候儀 互に諸咄しこれを禁ずる事
他の流派の考えや行動の基準を尋ねられる儀(シチュエーション)で、他の流派に対して互いに諸々思うことを言い合うような粗相はしないこと。他の流儀を尊重し和敬を保つという意味が込められています。

茶の湯の往来に不作法なきよう常に主客心得を磨き被る事
床の拝見、お茶やお召し上がり物の往来、道具の拝見と、茶の稽古の一連の流れを通して不作法なことが無いよう常に主客は心得を磨くようにしておくこと。

老若とも恥辱を捨て稽古あるべき事
若いものも老いたものも恥ずかしがらずに稽古に臨むこと。

伝授の問事は席中の差し支えなきようあるべき事
伝授の際の質問などは席の流れに差支えの無いように行うこと。

稽古点前仕ながら問事致し被る儀相禁事
稽古点前をしながら問い事をする行儀の相は禁ずる。

七事の内、数茶の外は極の言葉の余無言の事
七事式の中でも数茶のほかは極の言葉以外は無言で取り組むこと。

先祖以来教示の詩歌文章の意会得ある事
先祖代々に教え示された詩歌と文章の意味は会得(理解)しておくこと。

改めてお茶のお稽古の掟の元となった文章を読み返してみると温故知新ですね。
(参考:稽古の席掟 安政三年辰年仲秋 玄々斎宗室)