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棚物(たなもの)

点前の際に用いる茶道具で、水指や建水を飾り置く棚の総称です。

小間には使用せず、四畳半以上の広間の際に使用します。

素材は主に木・竹等の木地か塗物です。

棚物の畳に接地する接地面の板を「地板(じいた)」、

一番上の板を「天板(たんいた)」、

中間に棚板があれば「中板(なかいた)」といいます。

棚物は大別すると、台子・卓(しょく)・

袋棚(ふくろたな)に分けれらます。

季節や茶事、流派や道具となどにより決まります。


★棚の種類と千家好み★


・大棚

:紹鴎棚・・戦国時代に堺の豪商、茶人としても活躍した武野紹鴎が好んだとされた為、紹鴎棚と名付けられました。ヒノキ素材に春慶塗を施し、地板の上に白い鳥の子紙張りの引違いの小襖を付け、その上に4本の柱を置き天板を乗せて完成となります。


:袋棚・・2枚から4枚の引違戸が付けられた小さな収納棚で日本家具の一種です。

高さはあまり高くないのですが、その代わり横幅と奥行きがあり主に箪笥や床脇などと組み合わせて使われます。

また、袋棚には天井側に付けられる天袋や床側に付けられる地袋などの種類に分けられます。

 

:葭棚・・利休好みの茶棚で台目棚、利休台目棚とも呼ばれています。

杉の木地で作られた葭棚は、半間幅に一尺四寸五分の袖を付け葭簀を張り煤竹で抑えて作られた作品となります。

炉で使う際は炉縁いっぱいに客付の柱を立てて、風炉では踏込畳向こういっぱいに据えて使う事から炉・風炉兼用の茶棚となります。


・台子

:真台子・・水指などの茶道具を置く棚、台子の中でも一番格が高いとされ、真塗りの4本柱の形状が特徴です。

幅が91cm、奥行きが42cm、高さ67cmと京間でなければ大きすぎてはみ出してしまう程の大きさです。

 

:及台子・・地板に二本の柱を付け天板を乗せた簡易的な形状をしていて、中には紹鴎好み、利休好み、宗旦好みの作品がございます。

及第台子とも呼ばれ、利挙の進士及第の者のみが通れる門、その門を作った、進士及第の作文を置くための台という事が名前の由来となっています。

 

:竹台子・・長方形の桐木地で作られた地板と天板を4本の竹で支えた形状で、真台子を基本として村田珠光が考案しました。その後武野紹鴎に伝わった事で現在でも見られる及台子は、紹鴎や利休の時代に作られていたそうです。

大きさには大小とあり、大きい物は珠光好み、小さい物は利休好みと言われ、主に炉用として用いられていますが、風炉で使う際は小風炉を用いたと言われています。

 

:高麗台子・・鉄刀木や紫檀、黒檀、唐木などを組み合わせて七宝や瓢、青海波、網目紋などの透かしが入った形状が特徴となっていて、宗旦好みや遠州好みの二種類がございます。

元は高麗物の黒塗棚を宗旦が使い始め、後に一閑張で好んだと言われ主に炉で使われていました。遠州好の高麗台子などもありますが、形は一定せず左側に風炉、右側上部に袋棚、その下に水指が置ける大棚です。


・小棚

:二重棚・・地板に四本柱を付け天板、中板で構成された四方棚で、志野棚の右半分をもとに作られた棚です。四畳半以上の広間では他の棚物を添え水指や茶器を飾り手前する事が多いです。また二重棚では吸江斎好みの溜塗二重棚や、碌々斎好みの杉木地糸巻二重棚などがあり、茶会でよく見られる小棚となります。

 

:四方棚・・通常の棚は天板を支える為地板が大きくなっているのですが、天板の方が大きい形が特徴となっています。また、及台子を二分にした物を元に作られ、二本柱の上下に雲形の力板が付いています。

四方棚には利休好み、江岑宗左好みがあり、利休好みは角隅で江岑宗左好みは丸隅が特徴となり、古くは半台子、利休水指棚と呼ばれていたそうです。

 

:小四方棚・・四方棚が少し小さくなった棚ですが、四方棚同様天板の方が大きいのが特徴となっています。江岑宗左好みで見られる丸隅四方棚を小さくした小棚で、炉と風炉どちらでも用いられます。また、表千家13代無盡宗左が好んだ棚としても有名です。

 

:三重棚・・元は水屋道具を置く五重の仕掛棚として用いられていた物を利休が桐木地で三重棚に直し茶会に用いるようになったと言われています。

現在は杉木地に四本柱を付けその上に三枚の棚板を乗せ、地板の四隅に足を付けた形が特徴となっています。

また好みが多数存在し、一閑張は宗旦好み、桑木地は如心斎好み、真塗は了々斎好み、黒掻合せは認得斎好み、真塗爪紅は宗全好みとなっています。

 

:好文棚・・木屋町棚を元に作られた棚で、引き出しがなく香狭間透かしが梅の花透かしになっています。また透かしで入っている梅は、好文木と呼ばれる異称を持つ事から好文棚と呼ばれました。

形としては天板と中板は三角の入角で、向かう2面に梅の花透かしの脇板が付き、柱の下部分には鰭板が付いて地板が四方形の手前を少し切った形が特徴となります。

また、表千家12代目敬扇宗佐が好んだと言われ、京都北野天満宮の献茶の際にも好まれた棚と言われています。

 

:抱清棚・・桐木地で作られた抱清棚は、三方を板で囲み正面の板に香挟間透かしがあり、両側の板が弓形に形どられ勝手付の板の内側に柄杓をかける竹釘が打たれているのが特徴の作品です。表千家10代目祥翁宗左が好んだ棚で、地板がなく水指を両袖の板が清(水)を抱くような形になっている事から名前の由来になりました。

利休形の洞庫を2つ割りにしたような形とも言われていて、杉木地の抱清棚を表千家11代目の 瑞翁宗左が好んだとされています。

 

:卓

:丸卓・・中国で使われていた飾り棚の卓を棚物として応用し、炉と風炉どちらでも用いられます。丸卓には利休好みと宗旦好みがあり、利休好みは桐木地で二本柱が天板と地板の内側に付き、地板には低い足が付いているのが特徴です。

宗旦好みは黒の一閑張片木目二本の柱は地板と天板の外側に付き、地板に足がついていない変わりに厚くなっているのが特徴です。

また、檜木地溜塗は表千家8代目の件翁宗左好みで、表千家12代目惺斎宗左の好みは松の木摺り漆や青漆爪紅などがあります。


:桑小卓・・表千家の四代目仙叟宗室が床に用いる為に好んで使われた物で、当時は青磁袴腰香炉や瓢の細口花生などと組み合わせたと言われています。

桑木地で作られた桑小卓は、高さが一尺七寸一分の細長い形状で、三分角に一分面取りした四本の柱で中板と天板を繋ぎ、地板がやや大きいのが特徴です。

現在のように茶会の点前に用いられるようになったのは、表千家七代目の天然宗佐が点前で使うようになった事が始まりとされ、 表千家10代目吸江斎宗左は桐木地の桐小卓を好み、表千家12代目の惺斎宗佐は一閑青漆爪紅を好んでいたと言われています。

 

:蓬莱卓・・天板、中板、地板が六角の亀甲形で、柱が少し湾曲になり柱と地板に朱の線が入っている事が特徴です。

表千家13代目の即中斎が自らの還暦記念に用いるなど大変好んでいたと言われ、棚が亀甲形で湾曲した柱に朱の線を入れた形が、鶴と亀を表している事から鶴亀吉祥という名もございます。

 

:高麗卓・・高麗台子を半分にした四本柱の棚で、真塗、一閑、青漆爪紅、溜塗、桐木地製などの種類がございます。

天板と地板が一尺二寸四方で、高さが一尺五寸となります。

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