今回、いわの美術がお買取したお品物は上野道善の一重切花入です。
一重切花入は千利休が豊臣秀吉の小田原攻めに同道し、伊豆韮山の竹で作った3作の内の1作で、正面に割れがあるのが最大の特徴です。
この景色を弁慶が引き摺った園城寺の釣鐘の割れになぞらえ千利休は銘を「園城寺」と名付けたと言われています。
花を入れる一重の窓と竹の節を生かした花入ですが正面の割れ目から水が漏ったそうで、千利休が使用した際、客から花入から水が漏ることを指摘された千利休は「この花入の水が漏るところが命です」と答えたという逸話が残されています。
これは千利休の水に対する感覚と美意識を伝える話として花入と共に少庵に伝えられ、後に松平不昧の手に渡り松平家から東京国立博物館に寄贈されました。
さて、そんな由緒ある一重切花入ですが、今回お買取したものは少し特殊な竹を使用しています。
東大寺にある奈良時代創建の仏堂で国宝に指定されている東大寺二月堂は奈良の早春の風物詩である修二会(通称・お水取り)という行事が行われ、竹のお松明が用いられます。
修二会で使われたお松明で作ったのが今回お買取した一重切花入で、2007年~2010年まで第219世東大寺別当・華厳宗管長を務めた上野道善が手掛けました。
共箱には「お水取り松明竹」という言葉や、銘「瑞雲」、そして上野道善の名が書かれています。
銘と上野道善の名は一重切花入にも入っており、特別な逸品として高く評価する事ができ、高価買取で対応致しました。
上野道善は高校卒業と共に入寺し、第205世別当・上野澄園の養子としてこの道に入った人物で、空海ゆかりの真言院住職、執事長を歴任し、大仏殿院主、学校法人東大寺学園理事長、そして東大寺別当と僧侶として素晴らしい経歴を持っています。
もともと茶をたしなむ文化は奈良時代に遣唐使や中国から来朝した僧侶などによって日本に伝えられた文化で、茶道は背景に禅の教えが存在しています。
そのため、上野道善は今回お買取した花入の他にも茶掛や茶杓などの茶道具の制作を行っており、また茶道具の書付も行っています。
いわの美術ではこれらをしっかりと評価して買取る事ができ、日本全国を対象に買取を行っておりますので、ご売却をお考えの上野道善の茶道具がございましたら、お気軽にお電話、メールにてお問合せ下さい。
もちろん、それ以外の茶道具の買取も大歓迎ですのでまずはご相談下さい。