炉・風炉(ふろ)
火を入れて茶釜を掛けて湯を沸かす器物を炉・風炉といいます。
器物の素材は銅製・鉄製・土製・木製などがあります。
元来、茶の湯では風炉は四季を通じて使用していたのですが、
村田珠光(むらたじゅこう)が四畳半に炉を切り、
武野紹鴎(たけのじょうおう)や千利休が
炉の点前を定める様になると
四季を通しての使用はしなくなっていきました。
現在では夏に風炉、冬に炉を用いるとされています。
炉・風炉には幾つかの使用別の種類があり、
五徳を使わずに直接風炉の肩に釜を掛ける「切掛風炉」、
火鉢型で透木(うすき)を用いて釜を掛ける「透木風炉」、
風炉の中に五徳を据えて釜に掛ける風炉に分かれます。
★風炉の種類や千家の好み★
・風炉の主な種類
:土風炉・・村田珠光や武野紹鴎の命により、その当時奈良の春日大社の神器を作っていた善五郎に土風炉を作らせた事が始まりとされ、奈良で作られた風炉で奈良風炉とも呼ばれています。土を焼いて作った素地に磨きをかけ漆を塗る事により綺麗な光沢が出る作品となります。
土風炉は、透木風炉から始まり、紹鴎風炉、利休形眉風炉、と変化してその後は五徳を用いて釜と一緒に使用される事が多くなりました。
:唐銅風炉・・中国から台子とともに伝わった仕付鐶の付いた鬼面風炉が唐銅風炉の始まりとされ、その後切掛風炉、朝鮮風炉、琉球風炉、道安風炉など様々な風炉が作られました。
銅と鉛、錫で作られた風炉となり、重量感のある作品となっています。
:鉄風炉・・名前の通り鉄で作られた風炉で、その多くは唐銅風炉や土風炉を写した作品が多く存在します。
一般的に風炉は綺麗な状態の物が高く買い取れますが、鉄風炉に関しましては、一部破損してカケた物、割れた所を鎹で繋ぎあわせたりした作品を欠風炉、破風炉、窶風炉などと呼びます。これらの作品は侘びを感じさせ、貴重な作品として重宝されています。
・細かい風炉の種類
:土風炉
:透木・・土風炉の種類の一つで、上縁の幅が広く平面になっているのが特徴です。
また、乳足の眉風炉が特徴となり、上縁部分に透木を置いて釜を据える事から透木風炉という名前が付けられました。
:紹鴎・・透木風炉のように上縁が平面の眉風炉ですが、紹鴎風炉の方が上縁の幅が狭く軸足と眉が角ばっていて少し大振りな所が特徴となります。
名前の通り、武野紹鴎が好んだ風炉なので紹鴎風炉と名付けられました。
:道安・・前欠風炉、前切風炉とも呼ばれている道安風炉は、江戸時代初期の茶人千道安が好んだ風炉である為、道安風炉と名付けられました。
口は折口で垂直の胴の下の部分がわずかに膨らんでいて腰の低い足が付いているのが特徴となります。
:面取・・利休が初期の頃に好んだとされる風炉の上縁の面を取った利休面取風炉や、道安風炉の面を取った面取道安風炉などの種類がある面取風炉は、火口の上部が切れていて前欠の上縁の部分を削ぎとった形が特徴となっています。
:紅鉢・・歌舞伎などで使う紅の顔料を刷る容器に似ている事から紅鉢風炉と名付けられ、火窓を半円形に切ったすり鉢形が特徴の風炉です。
素材は主に鉄製、陶器製の作品が多く土風炉の一種となります。
:四方・・名前の通り四角形の形が特徴的で、唐銅風炉や鉄風炉にもある形となります。
利休形の四方風炉もあり、大きい利休形四方風炉は眉がなく、小さい方は眉が有るタイプとなっています。
・唐銅風炉
:鳳凰・・風炉の表面に鳳凰の模様が描かれた唐銅風炉の一種の眉風炉です。
表千家の四代目、江岑宗左の息女が紀州家に嫁がれる際に調度品として好まれた物で、唐物薬缶をかけたと言われています。
鳳凰の描かれた貫禄ある作品は数多くの茶人達に好まれ、表千家六代目の原叟宗佐は百侘釜、表千家七代目の天然宗佐は好んで使っていた累座富士釜を添えて使っていたそうです。
また、裏千家八代目の一燈宗室は阿波焼で焼かれた鳳凰風炉を好んでいたと言われ、現在市場に出回っているお品物は少ないので価値の高い作品となります。
:色紙・・唐銅風炉の一種で、丸みのある胴に乳足が付き口が色紙の形に作られている事から色紙風炉と呼ばれています。また、江戸時代の中期に活躍された大西定林が作ったという事が伝えられています。
:箪瓢・・瓢箪を逆さにしたような形から箪瓢風炉と名付けられました。
上の膨らみが大きく下の膨らみが小さく火口が前欠きになっている少し独特の形が特徴となっています。
:鬼面・・唐銅や鉄の素材もある鬼面風炉は唐銅風炉の一種で、中国から日本に伝わった風炉の中で最も古い形の物と言われています。
切合で足は乳足、鐶が鬼面で仕付鐶になっているのが特徴で、風炉の中では一般的に良く見られるお品物となっています。
また、台子などにも良く用いられる事から台子風炉とも呼ばれています。
:朝鮮・・昔に使われていた寺院の香炉を転用、または形を写した物が朝鮮風炉の始まりではないかと伝えられています。肩が張り長めの三脚で上部に透し紋と前後には香挟間透の眉が施されているのが特徴で、真形釜を合わせる事が決まりとなっています。
:琉球・・初期の頃には鉄製の作品が作られていましたが、表千家六代目原叟宗左が唐銅琉球風炉に田口釜を添えて使っていた事から、唐銅風の作品も作られていた事がわかりました。
丸肩で胴は短く長い乳足を持ち、前後に香挟間の窓、欄干に段差があるのが特徴で、朝鮮風炉の次によく見られる風炉となります。
名前の由来は、琉球で作られた事や、大西美術館に所蔵されている北向道陳所持の立休庵風炉の「立休」という言葉がなまって琉球と呼ばれたなど様々な説がございます。
また、表千家十二代目の敬翁宗左が好んで使っていたとされる壷々透唐銅琉球風炉や唐錦琉球風炉などもございます。